技術資料
ここでは、インサートをご使用いただく際の各参考技術類の説明をします。 今後、この項目はお客様のご要望の多い順に追加更新していきます。(ご要望はこちらから)
インサートナットの注意点
1.ジャッキアウト トルク
インサートをご使用する時の条件が,以下の「注意必要な状態」に当てはまる場合,インサートに応力(ジャッキアウトトルク)が働き抜けてくる場合がありますのでご注意ください。
状態の説明 | 略図 | |
---|---|---|
正常な状態 | 締め付けられる品物の穴がインサート径より小さく, 締め付けたとき品物とインサートがあたる状態 |
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注意必要な状態 | 締め付けられる品物の穴がインサート径より大きく、 締め付けたとき品物とインサートがあたらない状態 |
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締め付けられる品物と樹脂の間に、 パッキンなどの柔らかいものが挟まっている状態 |
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※このような場合でも大きな力で締め付けない場合にはフランジタイプなどインサートの外周の大きなもので相手材にあたる面積を大きくすると使用可能な場合もあります。
2.内径が深い場合
下穴が使用インサートより深い場合には、 下穴に段を付けるか、右図の様にフランジタイプを検討してください。 フランジタイプは成型後インサートの各タイプにご用意しています。 |
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3.インサート内径に対する注意点
当社インサート内径は、通常「JISⅡ級」にのっとり製造しております。 成型時、インサート内径にピンを通し使用する場合、以下のいづれかの方法をおとり下さい。 1. JISⅡ級の最小規格にピン径を合わせる 2. 当社に対し「内径指示」を出す |
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4.インサートの強度について
インサートの強度は使用状況(挿入方法、相手材材質、相手材穴径、相手材ボス形状等)により変化します。
強度については、必ずテストしてから決定してください。
挿入方法
インサートの挿入方法使用状況や目的は非常に多様化しており、挿入方法もそれと比例し多様化しています。
しかしインサート自体は大別した場合「成型後使用インサート」「成型時使用インサート」の2種類に分けることができ、同様に 「成型後使用インサート」の挿入方法は「拡張方式」「圧入方式」「熱圧入方式」の3種類に大別され、「成型時使用インサート」は成型時に使用する方法のみとなります。
1.成型後インサート
挿入方法 | 特 徴 | 対応製品 | イメージ |
---|---|---|---|
拡張方式 |
|
ダッヂタイプ SD/FD |
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圧入方式 |
|
ビットタイプ SB/F |
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熱圧入方式 |
|
ウルトラタイプ UD/FD ビットタイプ SB/FB |
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2.成型時インサート
挿入方法 | 特 徴 | 対応製品 | イメージ |
---|---|---|---|
成型時使用 |
|
成型時
タイプ 平目 アヤメ |
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加工寸法の許容差
1.削り加工寸法の普通許容差

当社では、お客様より特に指示がない場合、許容差はJIS規格:中級(2級)に沿い製作しております。 詳細は以下のとおりです。
①面取り部分をのぞく長さ寸法に対する許容差
等級 | 基準寸法の区分 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
0.5以上 3以下 |
3を超え 6以下 |
6を超え 30以下 |
30を超え 120以下 |
120超え 400以下 |
400超え 1000以下 |
1000超え 2000以下 |
|
精級 | ±0.05 | ±0.05 | ±0.1 | ±0.15 | ±0.2 | ±0.3 | ±0.5 |
中級 | ±0.1 | ±0.1 | ±0.2 | ±0.3 | ±0.5 | ±0.8 | ±1.2 |
粗級 | ±0.2 | ±0.3 | ±0.5 | ±0.8 | ±1.2 | ±2 | ±3 |
極粗級 | - | ±0.5 | ±1 | ±1.5 | ±2.5 | ±4 | ±6 |
②面取り部分の長さ寸法に対する許容差(単位mm)
等級 | 基準寸法の区分 | ||
0.5以上 3以下 | 3を超え 6以下 | 6を超えるもの | |
精級 | ±0.2 | ±0.5 | ±1 |
中級 | |||
粗級 | ±0.4 | ±1 | ±2 |
超粗級 |
③角度寸法の許容差(単位mm)
等級 | 対象とする角度の短い方の辺の長と(単位mm)の区分 | ||||
10以下 | 10を超え 50以下 |
50を超え 120以下 |
120を超え 400以下 |
400を 超えるもの |
|
精級 | ±1° | ±30' | ±20' | ±10' | ±5' |
中級 | |||||
粗級 | ±1°30' | ±1° | ±30' | ±15' | ±10' |
超粗級 | ±3° | ±2° | ±1° | ±30' | ±20' |
2.下穴内径寸法

当社では、お客様より特に指示がない場合、許容差はJIS規格:中級(2級)に沿い製作しております。
成型時インサートを使用し内径指示を当社に出さない場合、金型ピン寸法は下記"min"を参考にしてください。
メートル並目ねじ
呼び | 2級めねじ内径 | |
---|---|---|
max | min | |
M1×0.25 | 0.785 | 0.729 |
M1.1×0.25 | 0.885 | 0.829 |
M1.2×0.25 | 0.985 | 0.929 |
M1.4×0.3 | 1.142 | 1.075 |
M1.6×0.35 | 1.321 | 1.221 |
M1.7×0.35 | 1.421 | 1.321 |
M1.8×0.35 | 1.521 | 1.421 |
M2.0×0.4 | 1.679 | 1.567 |
M2.2×0.45 | 1.839 | 1.713 |
M2.3×0.4 | 1.979 | 1.867 |
M2.5×0.45 | 2.138 | 2.013 |
M2.6×0.45 | 2.238 | 2.113 |
M3×0.5 | 2.599 | 2.459 |
※M3×0.6 | 2.440 | 2.280 |
M3.5×0.6 | 3.010 | 2.850 |
M4×0.7 | 3.422 | 3.242 |
※M4×0.75 | 3.326 | 3.106 |
M4.5×0.75 | 3.878 | 3.688 |
M5×0.8 | 4.334 | 4.134 |
※M5×0.9 | 4.170 | 3.930 |
M6×1.0 | 5.153 | 4.917 |
M7×1.0 | 6.153 | 5.917 |
M8×1.25 | 6.912 | 6.647 |
M9×1.25 | 7.912 | 7.647 |
M10×1.5 | 8.676 | 8.376 |
M11×1.5 | 9.676 | 9.376 |
M12×1.75 | 10.441 | 10.106 |
M14×2.0 | 12.210 | 11.835 |
M16×2.0 | 14.210 | 13.835 |
M18×2.5 | 15.744 | 15.294 |
M20×2.5 | 17.744 | 17.294 |
材質について
当社では、お客様より指示がない場合、インサート材料として「黄銅」(C3604BDF)を使用し製作しています。なお下記項目については受入時にミルシートにより確認検査しています。
また2001年11月より「環境にやさしい新合金→鉛レス、耐食性向上」を使用した製品製作も受け付けております。お気軽にお問い合わせください。
1.通常の材質→黄銅(C3604BDF)について
2.環境にやさしい材質→鉛レス黄銅(C6801)について
1.黄銅(C3604)について
材料特性

C3604は正確には「快削黄銅」と呼ばれ、被削性に優れ、展延性も望めるため「ボルト、ナット、小ネジ、スピンドル、歯車、バルブ、ライター、時計、カメラ部品」等に広く使用されており、昨今では「IT機器、輸送機器部品」等への使用が目立ちます。
BDFについてはB(Bar→棒材)、D (Drawing→引抜材)、F(Fabrication→製造のままのもの、機械的性質の制限はしない)をそれぞれ示します。
(参考JISH0500)
比較資料
材質 | ||||
---|---|---|---|---|
項 目 | 黄銅 (C3604) |
鉄 (SS400) |
ステンレス (SUS304) |
アルミニウム (5056) |
切削加工性 | ○ | △ | × | △ |
電気伝導性(%IACS) | ○(26) | △(12) | ×(2) | ○(27) |
熱伝導性(W/(m・k) | ○(117) | △(56) | ×(16) | ○(112) |
非磁性 | ○ | × | △(処理により異なる) | ○ |
材料品質
項目 | 内容(JIS H3250による) | ||||
---|---|---|---|---|---|
外観 | 棒は、仕上げ良好・均一で、使用上有害な欠陥があってはならない | ||||
曲がり | 2mにつき3mm | ||||
化学成分 (%) |
Cu | Pb | Fe | Fe+Sn | Zn |
57.0~61.0 | 1.8~3.7 | 0.50以下 | 1.2以下 | 残部 | |
機械的、 物理的性質 |
○→必須 △→省略 |
引張強さ | 伸び | 硬さ (ビッカース) |
時期割れ |
△ | △ | △ | ○ | ||
335以上 (N/mm2) |
- | 80以上 (HV) |
H3250 5-5 |
2.鉛レス合金 C6801について
材料品質
1.化学成分(C3604との比較) wt.%
合金 | Cu | Pb | Fe | Fe+Sn | Bi | Cd | Zn |
---|---|---|---|---|---|---|---|
通常 C3604 |
57.0~61.0 | 1.8~3.7 | 0.5以下 | 1.0以下 | - | 未管理 | 残部 |
C3604 カドミレス材 |
57.0~61.0 | 1.8~3.7 | 0.5以下 | 1.0以下 | - | 75ppm未満 | 残部 |
C6801 | 59.0~60.0 | 0.01以下 | 0.35以下 | 0.6以下 | 2.0~2.4 | 10ppm以下 | 残部 |
2.機械的性質(C3604との比較)
合金 | 質別 | 寸法 | 引張強さ N/mm2 |
0.2%耐力 N/mm2 |
伸び % |
硬さHV (2/3r) |
---|---|---|---|---|---|---|
C3604 | 1/2H | ∅10 | 445 | 320 | 27 | 135 |
C6801 |
1/2H | ∅10 | 455 | 330 | 25 | 140 |
3.物理的性質(C3604との比較)
項目 | 単位 | C3604 | C6801 |
---|---|---|---|
比熱 | J/(kg•K) | 377 | 356 |
比重 |
ー | 8.50 | 8.41 |
熱伝導率 | W/(m•K) | 117 | 96.4 |
線膨張係数 | ×10-6/K | 20.5 | 19.6 |
ヤング率 | kN/mm2 | 96 | 101 |
横弾性係数 | kN/mm2 | 36 | (38) |
ポアソン比 | ー | 0.32 | (0.33) |
導電率 | %IACS | 26 | 24 |
体積抵抗率 | ×10-3μΩ•m | 66.3 | 72.4 |
熱拡散率 | cm2/sec | 0.365 | 0.322 |
衝撃値 | J | 36.6 | 24.8 |
※本データは実測値であり、保証値ではありません。
樹脂について

プラスチック(樹脂)は「熱可塑性樹脂」「熱硬化性樹脂」の2種類に大別できます。
これらの樹脂は熱を加えたときに違いが顕著に現れ、違いは以下の様になります
樹脂種類による違い
熱可塑性樹脂(ねつかそせい) | 熱を加えると、やわらかくなる |
熱硬化性樹脂(ねつこうかせい) | 熱を加えると、硬くなる |
一般的に「熱可塑性樹脂」には「成型後インサート」、「熱硬化性樹脂」には「成型時インサート」をご使用いただいていますが、「熱硬化性樹脂」にも使用可能な「成型後インサート」も取り揃えています。
樹脂とインサート対応表
樹脂一覧
PE |
ポリエチレン | ABS | アクリロニトル ブタジニエン・スチレン |
PP | ポリプロピレン | PS | ポリスチレン |
PVDC | ポリ塩化ビニリデン | PMMA | メタクリル酸メチル |
PET | ポリエチレン テレフタート |
PVC | ポリ塩化ビニル |
PA | ポリアミド | PC | ポリカボネート |
POM | ポリアセタール | PPE | 変成ポリフェリン エーテル |
PBT | ポリブチレン テレフタート |
PSU | ポリサルフォン |
GF-PET | GF強化ポリエチレン テレフタート |
PES | ポリエーテルサルフォン |
PPS | ポリフェニレン サルファイド |
PAR | ポリアリレート |
PEEK | ポリエーテル エーテルケトン |
PAI | ポリアミドイミド |
LCP | 液晶ポリマー | PEI | ポリエーテルイミド |
PI | ポリイミド |
フェノール樹脂 |
エポキシ樹脂 |
ユリア樹脂 | ジアリルフタレート樹脂 |
メラミン樹脂 | ポリウレタン樹脂 |
アルキッド樹脂 | シリコーン樹脂 |
不飽和ポリエステル樹脂 |
洗浄について

当社インサートは、お客様に安心してご使用いただくために、すべての製品に対し出荷するまでに2度の洗浄を行います。 また洗浄液には地球環境を考慮し「有害物」の発生がないものを使用しています。
「当社製造の流れ」
形状加工![]() |
↓ |
一次洗浄( 多槽式溶剤洗浄機)![]() |
↓ |
完成洗浄(多槽式水洗浄機)![]() |
↓ |
梱包・出荷![]() |
1.多槽式溶剤洗浄機
工程目的 | 洗浄方法 | 洗浄液 |
---|---|---|
切粉除去・脱脂 | 前後揺洗浄 | 工業用洗浄溶剤 |
横揺洗浄 | ||
すすぎ | ||
乾燥 | 熱風回転 | ー |
![]() 4槽式溶剤洗浄機 |
![]() 洗浄バスケット |
2.多槽式水洗浄機
①洗浄バスケットに製品を投入
②洗浄機にセットする
③多槽式水洗浄機(全自動)
工程名称 | 意味合い | 洗浄液 |
---|---|---|
洗浄 | 脱脂・切粉除去 | 弱アルカリ洗剤 |
↑ |
すすぎ | 市水 |
↑ |
↑ |
↑ |
遠心分離 |
乾燥 | ー |
熱風ブロー |
↑ |
ー |
↑ |
↑ |
ー |
④バスケット冷却
⑤製品取り出し
![]() 多槽式水洗浄機 |
![]() 洗浄バスケット |